『懐かしの最上川 昭和二十九年夏 ノスタルジア』
1996.1.10
薗部澄
みちのく書房
もくじ
吾妻連峰〜上山
山形〜尾花沢
新庄〜田麦俣
酒田〜温海
ノスタルジアに寄せて 水戸部知巳
この本に寄せて 私のくらしと薗部さんの仕事と 斎藤たきち
昭和29年社会の動向
昭和29年物価表
あとがき
新旧対照合併図面積人口表付き
「あとがき」より
……最上川は水源から河口まで他県に流れ出ることがない。その流域に、出羽、羽前、そして山形県のいまに連なる暮らしを育てて流れる。家の造り、生活具、働き着、日常の仕事のこなし方に、ひょいと”昔ながら”が見える。長い間に気候風土が培ってきた形があり、材質があり、そのすべてに必然性があって、こなれて、人の汗も滲ませながら、風景は安定して調和がとれていた。……
……前年に木村伊兵衛さんが秋田を発表していた。評価の高さには、たぶんに異風俗に対する新鮮な興味がふくまれていたように思う。いま、私はその受け止め方の底の浅さを知った。古くから人が学んできたのは自然との折り合いのつけ方だった。長い冬。雪害、水害。雪国の風俗は少しでも楽な暮らしを求めてのチエが作った。風景に添えられているものもすべて。働きやすい季節は短いから働き抜く。辛いことも多いから、信心厚く、農閑期の湯治のたのしみも深い。人の日常の濃さを私は撮りつづけた。荒い気候の中で人はますます精いっぱい生きるのか。東北の冬の暮らしを見たいと思った。……