放射線量日々生真面目に計測す さすけねえ、とはかなしきことば
齋藤芳生
……「さすけねえ」とは「大したことはない、大丈夫だ」という意味の方言だそうである。(略)古くから伝わる言葉が、重い意味を帯びて使われていることに、作者は痛みを感じている。原発事故によって言葉も傷ついたのだという認識が、ここにはある。
と歌人の吉川宏志さんが朝日新聞に。「さすけねえ」をぱっきりホンヤクされるとそれは違うと言いたくなる。じゃあ何?と聞かれても困るけど。なにより、「さすけねえ」という言葉自体が原発で傷つけられたとは思えない。そもそも共通語に訳しがたい方言がさらに訳しがたい意味を事故によって含むことになったという、言葉というものの包み込む力に思いいたっているように感じる。子どもの頃におとなが「さすけねえ」と言うのを聞くとおおざっぱでお気楽、むしろいいかげんと感じたものだ。そうだったのかもしれない。でもそればかりではなかったのかもしれないと今なら思える。方言辞典の使用例に残ってほしい歌。