船木仁さんの命日11月18日の「ギャラリーときの忘れもの」のブログは
船木仁『風景を撫でている男の後姿がみえる』。遺稿詩集『一本の虫歯のための道具』に寄せた森原智子さんの言葉も引用くださっている。
「船木仁のこと」
船木仁は、昭和五年五月十日、秋田県大曲市黒瀬に生れた。県立角館高校から日本歯科大学へ入り、当時大学図書館にいた詩人北園克衛の知遇を得て、二十八年詩誌〈VOU〉同人となる。大学卒業後、東京・日本橋で歯科医院開業、かたわら詩誌〈et〉〈ATTACK〉に関わった。
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五十年一月、一行詩集『風景を撫でている男の後姿がみえる』を盛岡・杜陵印刷社から出版。五十四年詩誌〈gui〉創刊に参加。五十五年、北園克衛句集『村』を、藤富保男氏と共同編集、高橋昭八郎氏の造本協力を得て、東京・目黒の瓦蘭堂から出版。五十八年、一行詩集『瑪瑙の街』を盛岡・点点洞より出版する。
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慶應病院に入退院をくりかえす間、ひどい呼吸困難におそわれる時も、平静を失うことはなかった。六十一年夏、最後の入院となる。
十一月十七日、朝食がとれなくなったが、予期していたらしく、家人におどけて両手をあげ、明るい顔でギブアップのポーズをした。午後二時すぎ脳死状態、翌十八日午前八時四十六分心音が消えた。
五十六年の歳月だったが、始終人や物からきびしい距離をとって、何ものもおかさず、またおかされることがなかった、と思う。
この詩集を可能にするため、ご尽力なさった藤富保男氏と、お心のこもる文章をお寄せ下さいました、清水俊彦、鍵谷幸信、高橋昭八郎の各氏に深くお礼を申しあげたいと思います。
昭和六十三年十一月 池袋にて 智子