「近代将棋」2003.1
p90)気晴らしの旅に出てみないか 25
伊勢〜2000年の浪漫が息づく神代の夢語り――初詣で
奥成達(青山学院大学文学部講師・詩人)
木代圭(写真家・エッセイスト)
……
江戸時代の庶民は、いろいろな制約にしばられていた。
……
こういった人たちが、旅に出て思いっきりハネをのばしたい、という願いの大義名分として使ったのが”お伊勢参り”なのである。……
この参宮ブームにも、やはりちゃんと仕掛人ともいうべき人々がいた。「御師」という職業の人々であった。
……最盛期には数百人もいたという御師たちは、全国に伊勢信仰を広める宣伝作業に、いまでいうガイドブックやパンフレットをつくり、「伊勢講」という旅行代理店の役割も担っていたのである。
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つまり伊勢神宮とは、内宮に天照大神が、外宮には仲良しの豊受大神が祀られている二つの神殿のこと、と思うのが一番わかりやすい理解の仕方のようである。
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実は、伊勢のもう一つの顔は、一大歓楽地なのである。伊勢神宮の内宮と外宮の真ん中あたりの伊勢山田には、「古市」という日本三大遊郭の一つが、かつてあったのだ。
男たちは精進落として宴会をし、古市の遊郭で遊ぶのを最終の目的にしていたのである。なーんじゃ。
「お陰でさ、するりとな。抜けたとさ」と歌い踊りながら、群れをなして伊勢を目指した”抜け参り”の気分を、ぼくにも取り戻せないものか。……