村上善男展(2005.4.23〜7.3 於:
川崎市岡本太郎美術館)
1955年、二科展に応募した村上の作品《ヴァグースQ》に目を留めた岡本太郎に、二科会九室(通称太郎部屋)に誘われたことをきっかけに二人の交流がはじまったとのこと。盛岡から上京して絵を描きたいともらした村上に、岡本は「お前はそこ(東北)で闘え」と。以降村上は東北に暮らし、1962年には詩人・高橋昭八郎に呼びかけて「一人の詩人、八人の画家、一人の芸術家、舞踏家による盛岡四月八日の日曜日」(県自治会館)などを開き、岩手県内で美術の運動体を模索した時期もあったらしい。
同展はこのあと、萬鉄五郎記念美術館、天童市美術館、尼崎市総合文化センターに巡回。内容は、二科展入選初期の「シュルレアリスム期」、二科会九室入りした1955年以降の「綾取りシリーズ」、注射器や新聞の紙型などをもちいた「注射器シリーズ」と「計測シリーズ」、仙台在住期の「気象シリーズ」と「貨車シリーズ」、弘前に移ってからの「釘打ちシリーズ」の四部構成。
もっとも惹かれたのは「気象シリーズ」。いずれも計算しつくされたバランスと根拠ある数字表記による美なのかどうか。特に《5月31日の気象》1977は、「トンボ」のようなラインによって輪切りした地球のある地点をフォーカスし、天空・地上・地下をおしなべて静かな色合いで描いている。見るものは夜空に浮かぶ堅固なる球体を思い浮かべるが、安心や不安といったものではなく美しさを前にした感嘆というか絶句を得るでしょう。
図録は糸かがり角背、裏白のクラフト紙みたいな紙の白面に《赤倉圏赤幕包囲陣形圖》1998を刷って天地を折ってかけたカバー付きで1500円。執筆は、西野嘉章、中原佑介(再録)、岡本敏子(再録)他、村上の講演記録「馬場彬と『サトウ画廊』の画家たち」(文中「VAU」と誤植あり残念)など。
編集・制作:平澤廣、井澤博、池田良平、佐藤玲子
レイアウト:三木俊一(文京図案室)
写真:上野則宏、岩根悠樹、5×7スタジオ
印刷:吉原印刷
助成:財団法人地域創造
協賛:堀内カラー
発行:村上善男展実行委員会
発行日:2005.4.23
・参考:村上氏の詳しい略歴
AOMORI圖工系倶楽部/青森美術系作家リスト/村上善男・参考:
高橋昭八郎