今年は蝉が多いのだそうですね。うちの玄関のドアの外にも死骸が。どうして蝉はいつもお腹を出して落ちているの? 昼飯の話題です。木でも壁でもとにかく最期の力をふりしぼってのぼって、それがとぎれて落っこちるからあおむけになるのでは? だがその玄関で命絶えた蝉の、ああまもなく命絶えそうだのときに目撃したところによると、確かにふつうに地面を歩いていたというのです。となれば、あの手足を思いっきり伸ばして深呼吸しながらミーンとかジィーとなき、イナバウアー的にひっくりかえったのであろうか。蝉はとても乾いていて、そのせいもあるのだろう、とにかく寸暇をおしんで鳴いたはずだし、生ききった感じをその姿にみる。でもひっくりかえって死ぬのだとすれば、それなりに最期はキツいのだろうかしら。
いやじつは、鳴くこともかなわず住宅街にまぎれこんだ一匹かもしれません。妄想はともかく、ごくろうさまと手を合わせます。確かに今も、ジィジィと蝉が鳴いている。