家の近くの坂道の途中に子育て支援センターのようなところがあって、お母さんたちがバギーを押して坂道を上ってくるのとよくすれ違う。その坂の下に小学校の正門があり、ときどき落とし物がその門にかけてある。手袋や帽子など小さい子どものものが多いのはそういうわけで、小学校の父兄は名札というか入館証のようなものを携帯する必要があるみたいで、そんなものもたまにある。
落とし物に気づいただれもが拾って周囲を見渡し、一番人目につきそうな門にただかけている。だがそこはいまや間違いなくこのあたりで拾われた落とし物を掲げる場所となりまして、すぐ近くに区の掲示板もあるんだけれど、そういうのとは、また違う。
椿がぽとり落ちるのも今だが、落ちた椿をほっておけるひとは少ないみたい。近所にある椿の木の下にはいつも落ちた椿が丁寧に並べられている。そして界隈の家の鉢ものの椿でも同じで、落ちた花がやっぱり鉢のふちにそって並べられている。落ちたところがしっとりと滋味溢れる大地なら手もでないのかもしれないけどそこはアスファルトだから、どうにも手が伸びてしまうのだろう。いつか昔の学芸会の、色ちり紙で作った花みたいに並んでいる。この道を通るたくさんのひとが腰をかがめて拾っている。