「大琳派展 継承と変奏」へ。「雌日芝摺下絵古今集和歌巻」の紙背に摺られた蝶と紙師宗二の印、光悦謡本「殺生石」の表紙で前足・後足をそれぞれ揃えてツンと振り返る鹿、「平家納経 願文」の見返しで白いしっぽ眩しく体まるめてかがむ鹿(写真)。なぜかこのたびは鹿や蝶や兎や動物に目がいく。
展示は、琳派が狩野派のような世襲ではなくて、本阿弥光悦、俵屋宗達←尾形光琳・乾山←酒井抱一、鈴木其一という私淑による結果として"継承と変奏"で継がれてきたことをみせており、行ったり来たり見比べる。図録は束2センチもあろう重たいもの。金銀たっぷり、宗達と光琳と抱一と其一の風神雷神が巻頭でどんと折りで配されているのは豪華も過剰か。琳派の工芸に持つ印象に近い。実物では見えにくい銀や雲母摺りを印刷でみる。高橋裕次さんの「光悦と宗達下絵料紙」が読み応えあり。
田中一光が「JAPAN」(1986)に書いた鹿は「平家納経 願文」の鹿、「琳派芸術に共通する造形上の特徴は、かたちが丸いということ」で、はない。すべてが、ひらがなで綴られた歌のように、人間の心を、やさしい曲線で包んでしまう」(『デザインの周辺』田中一光)。