「CINEMA APIED」(シネマ アピエ)特別号
テーマ:映画の食卓
発行日:2011.10.15
発行人:金城静穂
発行所:アピエ
印刷:株式会社樹希社
表紙絵:山下陽子
表紙デザイン:空中線書局
挿画デザイン他:金城京香
48p)アフター・ラフター 金澤一志
……「ひまわり」はソフィア・ローレンの豊かな肉体ではなく、演技に多くを負う映画である。とくに列車を見送るシーンなどは、彼女の息づかい、まばたき、こまかい身体の律動が繊細に統制されて見事というほかない。
……「ひまわり」を反戦映画とみるむきがある。もしそうならば、これほど清潔な反戦映画はない。
……ここで描かれているのはありふれた〈私〉における喪失と、その悼みである。社会や歴史の話ではない。だから〈私〉の悲しみが伝播する。
……マストロヤンニがつくる「ひまわり」のオムレツは、二十個以上の卵だけを使った巨大プレーン・オムレツ。無造作な料理、絶えない笑い、飾りも嘘もないささやかな食卓の光景がほどなく喪失する幸福の輪郭を悲しく照らす。オムレツは生(エロス)の明と暗を満開のヒマワリの花にまとわせる冷酷な予兆としてはたらく。……
図版は、本文に添えられた Piet Mondrian の Sunflower Ⅰ. 1907-1908
57P) プロフィールとコメント
金澤一志
一本だけシナリオを書いたことがある。トマト対キュウリの豪華な食事シーンを含む「バンパイア対カッパ」。
*ガケ書房と恵文社一乗寺店初の共同開催による
『きょうと小冊子セッション』(2011年10月18日~10月31日)にて先行発売