「CINEMA APIED」vol.11 テーマ:映画と小説
2015.4.20
アピエ
12p)
うつろな人ーー「渚にて」の映画と小説 金澤一志
おまえが好きなSFだから、と父に連れられて観た「渚にて」は、小学生が面白がるような映画ではなかった。……
……
しかし映画では無視されて、原作にしか表れていない重大事もある。渚にて、ON THE BEACH は潜水艦乗りにとっての上陸という意味でもあるが、イギリスの近代詩人T.S.エリオットの「うつろな人たち」(1925)という詩を参照したことが明記されているのだ。
ことばもなく/潮が満ちるこの渚に(on the beach)集う/こうして世界は終わる/こうして世界は終わる/こうして世界は終わる/大きな音もたてずに すすり泣きながら
終焉はゆるやかに、静謐のうちにやってくる。……終戦を二十歳でむかえた父もそのうちのひとりだっというわけである。