『銀曜日』44号
2015.8.1発行
代表・責任者 丸山由木子
p36)藤富保男 ぼくの失敗談
一九五〇年ごろ、戦後の荒廃から少しずつ世の中が元通りの生活に戻ろうとしていた時の話。まだぼくは詩を書いて間もない頃であった。友人たちと小さい同人雑誌「SETTE」を出し、その作品を集めて最初の詩集『コルクの皿』を作ることにした。しかし出版社はおろか、本造りなど全くの素人。それを「VOU」のメンバアでもないのに北園克衛さんが、表紙の装幀をやってくれたし、編集の手ほどきも教えてくれたのである。一九五三年四月刊であった。 その詩集の中に入れた一つの詩。題名は「花」、内容は「行く」たったこれだけの詩である。
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要するにある詩想を〈述べる〉のではなく、〈射る〉という姿勢で書くことに憧れを持っていた。その手段として題名と内容に、距離を置くことが肝要であるのは当然。それでいて題名が内容の象徴であってはいけない。内容が単なる説明になることを極度に嫌っていた。それでいて題名と内容を天秤にたとえると、釣り合いがとれていないと不格好である。
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刊行後、ベトナム・サイゴンで刊行されている『亜細亜』という英文雑誌に詩集が再録されたときに、「花」を、日本人の花見を書いた作品と解釈されたことに対する自らの”失敗”の告白。