『ひとり遊びぞ我はまされる』川本三郎 平凡社 2013

カヴァー装画 岡本雄司「小湊鉄道 飯給駅」(木版墨摺り)
p5)
まえがき
……
鉄道の列車は、ひとり遊びの最高の遊び場所である。自分が作った造語に「近鉄(ちかてつ)」がある。東京の家に近いローカル線に乗りに行くこと。「乗り鉄」の一種。……
p84)
「長寿建築」が残る町、山形県長井市を歩く。
……
街を歩いてささやかなことだが、気がついたことがある。町の各所の案内板が実によく作られていること。古い建物のところにはその歴史がきちんと書かれている。観光パンウレットも充実している(前述したように英文パンフレットもある)。町のやる気を感じさせる。長井がこんなにいい町とは。寒河江といい、左沢といい、私自身、山形県とは相性がいいようだ。……
p107)
寒河江で地元の人と交流する。
東北の好きな町のひとつに山形県の寒河江市がある。
山形から出ているJRの左沢線(山形ー左沢、約26キロ)の途中にある。人口約4万人。
私の好きな町の条件である「鉄道の駅を中心に町がある」「地場産業がきちんとしている」に叶っている。
左沢線の寒河江駅(大正10年開設)は駅舎が近年きれいになり、駅前も開発され、町並みは落ち着きがある。高い建物は少なく、空が広い。(中略)
講演のテーマは「『男はつらいよ』を旅する」。というのは、寒河江は「男はつらいよ」シリーズの第十六作『葛飾立志篇』(1975年、樫山文枝出演)に登場するから。
渥美清演じる寅のところへ、ある日、寒河江に住む女学生(桜田淳子)が修学旅行の途中に立ち寄る。彼女は、寅が、かつて一夜だけ世話になった寒河江の食堂のおかみさんの忘れ形見だった。
(中略)
寒河江にはもうひとつ、昔の縁がある。
駆け出しの物書きの頃、「キネマ旬報」1975年5月下旬号に、全国の若い映画ファンが出している「シネコミ」(映画ファンによるミニコミ)を紹介したことがある。
そこで、東北のある高校の、女子生徒ばかり8人の映画研究会が出している「クーパー」という「ミニコミ」を紹介した(「キネマ旬報」の編集部に送られてきたもの)。『哀愁』『エデンの東』『わが青春のマリアンヌ』などの映画評がういういしかった。
この高校が寒河江高校。私と寒河江のはじめての出会いだった。
(中略)
そのあと、駅の近くにある佐藤繊維を訪ねた。(中略)寒河江の町並みがきれいな一因は、世界的なファッションがあるためかもしれない。(中略)
駅前のホテルで一泊した。朝早く起き、寒河江に来たらいつもここを歩く、用水路沿いの散歩道を歩く。寒河江は、最上川と寒河江川のふたつの大きな川に挟まれている。……
p147)
荷風ゆかりの恵明寺に詣でる。
……
山形市内での懇親会のあと、三人で左沢線に乗り、昨年の夏に行って以来の寒河江に行く。山形県に来たら何はともあれ寒河江だ。前回行った居酒屋が日曜日なので休みなのは残念だったが、ホテルの近くにいい居酒屋を見つけ、改めて寒河江はいい町だと思った。……
p205)
藪原駅そして天野健太郎さんのこと。
……
山田太一に「小さな駅で降りる」というドラマがある。(中略)
思わず父親が「この駅で降りようか」というと、全員が賛成する。(中略)私自身、これまでそうやっていくつかいい駅で降りた。
左沢線の寒河江、山形新幹線の高畠(山形)、中央線の春日居町(山梨県)、身延線の市川大門(山梨県)などなど挙げてゆくと切りがない。……
初出誌
「東京人」2018.8〜 2021.12 川本三郎「東京つれづれ日誌」
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