『菊池伶司 版と言葉』は、遺された3冊の日記とカレンダーを手にした堀江敏幸さんの語りがいい。後半には日記の抜粋とカレンダーが収録されていて、カレンダーは賞をとって急逝する68年のものである。バイト、バイト、バイト、ときに工房。そして「北」の文字。
菊池伶司という人は、数年前どこかで展の告知を見て気になっていたのかどうか名前とひとつの作品以外知らない。装丁は間村俊一さん。本屋さんに並ぶ状態ひとつではなくて、帯は帯、帯をつけた本、はずした本、それぞれの状態で佇む「本の場所」を構築くださるのね。「1960年代」や「伝説の夭折版画家」なる文言が枕詞のようにつく帯の文言にも、優しい気持ちになる。
町田市立国際版画美術館で「菊池伶司とその時代」展開催中ですが、作品を観るよりこの本を読むことが私には楽しい。週末、堀江さんがゲストで「新日曜美術館」で紹介されるとのこと。この番組4月からちょっとへんでしたから、久しぶりに期待して見てみましょう。