毎朝牛乳が飲みたくていっぱい肉が喰いたくて、少しでも安い葉っぱが食べたくて年中どんな実も食べたくて。それを叶えようと一致団結やってまいりましたら、おかげさまでヒトは全体として、ずいぶん丈夫になりました。これからはより丈夫なヒトばっかりが増えてゆく予定です。
フレデリック・ワイズマンの『肉』はアメリカの食肉加工工場を、モノクロであったせいもあるがより淡々と描いていた印象があります。『いのちの食べかた』はどうも邦題がいやなのだけれど、農業のありかた(植物のイノチ)も等しく追っていたところがいい。畜産などではヒトが機械を操作あるいは補填するが、農業では巨大な機械にヒトが追われている感じ、植物は動かないからなあ。大量生産のために整えられた様々な機械の動きは美しいです。皮を剥ぐのも木を揺するのも、熟練した人の繊細な動きを模すことに、これまたヒトびとが一致団結してやってきたからでしょう。映画に出てきた工場や農場は清潔でしたが、こうした現場で働くのは過酷であるに違いありません。そしてその周辺には、清潔じゃない「場所」があるやもしれません。『ダーウィンの悪夢』のナイル・パーチ工場の周辺みたいに。
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内澤旬子『世界屠畜紀行』