ムンクを国立西洋美術館に。一点ずつの作品を個々に観るのではなく「全体として生命のありさまを示すような一連の装飾的な絵画として」あるまとまりをもって観て欲しいと描いていたムンクの、装飾性に焦点を当てた展。全7章からなり、ムンクが意図した、あるいは依頼されたことによる「あるまとまり」ごとの章立て。<生命のフリーズ>:装飾への道、人魚:アクセル・ハイベルク邸の装飾、<リンデ・フリーズ>:マックス・リンデ邸の装飾、<ラインハルト・フリーズ>:ベルリン小劇場の装飾、オーラ:オスロ大学講堂の壁画、<フレイア・フリーズ>:フレイア・チョコレート工場の装飾、<労働者フリーズ>:オスロ市庁舎のための壁画プロジェクトと続く。実際の展示状況は会場内のモニターで流されている。
ムンクのアトリエの写真は何枚か残されているが、1929年に撮った一枚の写真で知る配置をこの展で再現している。あまりに有名な「叫び」が扉の上に配されて左右に「不安」と「絶望」、そしてその大きな扉の左右に配された「装飾のための下絵」(no.22,23)。囲まれた扉がひじょうに明るいものに見える。ムンクはここで年中その配置を変えていた。
多くの作品に描かれた独特な海に映る満月の影は「i」に似ていて、グッズにもなっている。抱き合って踊る男女はペンギンのよう、画面に一人のびっくり眼、<生命のフリーズ>の展示スケッチに描かれた樹木、銅版画の上に装飾的に配された図柄、その絶妙なこと。たとえば「女性/スフィンクス」、「マドンナ」の淵の絵もそうかこれは枠なのか。写真は
munch museetより。
図録はよーく開く並製本で堅表紙に透明のカバー付き。美術展の図録はより「本」っぽいのが好まれているように感じるがこれは逆、だが実際持ち帰って見直すとこれがまあよーく開くこと開くこと。見やすくて、すばらしい。この透明カバーはきっと紫外線侵入防止加工とかされているのだろうな。
解説:田中正之
編集:省略
編集協力:安永麻里絵、土山亮子、岩崎方子
デザイン:田中久子
制作:アイメックス・ファインアート
印刷:日本写真印刷株式会社