「Sprinkling A-side」 市川孝典+鬼海弘雄 展

〈鬼海の写真作品にインスピレーションを受けて市川が線香の焦げ跡、更には手描きによる淡彩の後、sanderによって仕上げられた新作、また市川により選ばれた鬼海の代表作を含む写真作品で構成〉。白い紙を幾種類もの線香で焼いて、抜けた穴による影も加えた濃淡で描かれているのだけれどこれがみな下書きなしの「記憶」による、と!
毎度狐につままれたみたいに覚え重ねる鬼海写真への懐かしさ。その、「懐かしい」と簡単に言ってしまう自分への「?」に市川さんもひっかかっているのではないかしら。それでもっともなじみの方法で自身に問うたのではないかと。でもその方法が異様驚愕超絶過ぎて、今夜もし通りすがりに目にしたならば私には「すごい」としか残らなかったろう。
懐かしいって何だ。いつか姉と子供時分の話をしていたときに幼い姪が「懐かしいっていいなぁ」と言った。話に入れないつまらなさの表明だったろう。でも実際彼女の頭のなかではなにがどう反応していたのか。私用辞書の「懐かしい」の用例にはこのセリフが姪の表情とともにあるし、市川孝典+鬼海弘雄展のこともここにメモしていつか自分にわかることばで書き入れたい。
写真は鬼海さんのツイッターより。